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2024年01月22日

カテゴリー:院長より

見果てぬ夢の地平を透視するものへ-208

こうして、もとにもどることのできない大きな流れがまきおこってきた。精神医療のいままで行ってきた<治療なき拘束>がはじめて白日の下で明らかにされたのである。

さまざまな苦悩に満ちた運動の成果として、一九六九年には精神病院入院に関して大幅な人権の尊重とその擁護を認めたカリフォルニア州新精神衛生法がうまれた。現在の私達の目からみればこの衛生法も多くの妥協を含んでいるとはいえ、確実にその後の精神医療変革の運動の原点となったのである。

一九七一年にはM・P・L・Pが精神障害者の権利に関する決議を発表した。(Mental Patient’s Bill of Rights。)

一九七二年には、カリフォルニア州新精神衛生法以后のより具体的な到達点として重要な意味をもった合衆国連邦裁判所判決としての所謂、精神障害者に十分な治療を与えるための最低限の合意的基準がなされるに至ったのである。

このような司法精神医学の新しい地平はますます拡大しつつある。無論、それだけ反論もさかんになり、議論の幅も拡大されているのであるが、どのような議論をとってみても、そこには過去の精神医療がかかえ込んだ巨大な暗黒と矛盾とが浮び出されていて問題のおぞましさを感じさせる。

日本においても、精神医療をめぐる法律問題はいくつかの形式で実行に移され、多くの場所で精神医療へ鋭いメスを入れる役割を果している。いくつかの精神病院不祥事件の裁判、入院をめぐる法的解釈の問題、保護義務者をめぐる解釈、また直接に精神衛生法そのものの概念を検討する動きもさかんである。精神神経学会の衛生法小委員会の活動なども一つの成果と考えてよい。

しかし、総じて我が国の法律論争はまだ、不祥事事件の処理といった個別的論争に主力が注がれて、司法精神医学を社会精神医学的に措定し、具体的な変革を手にするまでにはまだまだ解決しなければならない問題が山積みされており、私達を含めてあらゆるところからの努力が要請されているのが現状である。

(Ⅴ状況のなかの精神医学/状況のなかの精神医学 つづく…)

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