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2019年11月07日

カテゴリー:院長より

見果てぬ夢の地平を透視するものへ-171

更新が大変遅くなり申し訳ございません。

≪N.Hさんのカルテから。≫
現病歴 昭27年頃発病(精神分裂症)。全然、口をきかなくなった。
一時単身で川崎方面のバタ屋に住みこんでいたことがあったが、昭33年11月に弟夫婦にひきとられて同居。当時は空笑が認められる程度で、家でブラブラしていたが、昭34年2月頃より外出しなくなり、拒食などするようになった。また、自己の体に刃物で傷をつけたり、夜間臥床時に刃物を際に置いてねたり、重いもの(石や鉄塊等)を自分の足の上に落して自傷する。
自傷行為著明なため、昭34年5月1日、当院に精神衛生法による措置入院となる。
入院時現症、両足に裂傷・腫脹が著明。全身に、自傷行為による傷の瘢痕が多数認められる。
無口、硬い顔、時に空笑いを認める。
「死んだ女の人と性交をした。見えはしないけれど、おしゃかさまがそこにいる。」
「馬鹿野郎という声がする。誰かから体をたたかれたり、けられたりする。」
「今、見えない女の人が自分にだきついている。誰かと(性交を)やっていないとすまない。昔のえらい女の人、神代時代の人――おとたちばな姫。便所にいけば(性交が)とれるというわけで、便所にいってもやっぱりとれない。」
「死んだ女の人が抱きついている。清水次郎長の奥さんが抱きついている。」
等々をくり返し述べている。
家族歴 両親死亡。姉四人、弟一人の五人兄弟の長男。兄弟はすべて健在で、本人以外はすべて既婚。精神科的遺伝負因は認めない。
学歴 旧制中学を戦争のため2年で中退。
入院后 電気ショック7回、向精神薬与による治療。その後、次第に精神状態がおちつき、幻聴、妄想なども軽快し、言語、思考もまとまってきた。

(Ⅳ私的表現考/世界の病むこと つづく…)

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