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2019年05月28日

カテゴリー:院長より

見果てぬ夢の地平を透視するものへ-170

具体的な一つの方法として、私達は長期入院患者を伴って、その肉親への家庭訪問を実践することにした。その第一の対象として、精神衛生法第29条による強制措置入院を、主として経済的な理由から解除できないでいる患者をとりあげるべきだという判断が私達にはあった。病院、ケースワーカー等と福祉事務所との間の疎通のなかで、このような患者を単に書類上の決定として、措置解除→生活保護による同意入院、への変更はむしろ簡単におしすすめられることになっていたが、私達はこのことに満足してはいられなかった。患者を、ともかく家族の集中的な力学の渦のなかに立たせなければ、将来への展望など何一つ生まれ得ないと私達は考えていた。

50年6月から、私と病院ではベテランのケースワーカーであるWさんとは、チームを組んで長期入院患者の家庭訪問(患者を伴って)を行うことにした。

以下に述べようとするN・Hさん(38才男)の場合もその一つのケースである。
N・Hさんの家庭訪問は、6月の末に近く真夏のような陽光が照るむし暑い日だった。

(Ⅳ私的表現考/世界の病むこと つづく…)

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