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2017年01月07日

カテゴリー:院長より

見果てぬ夢の地平を透視するものへ-144

彼女の母は、その土地の旧家の跡とり娘だった。気立の強い人間であり、やはり自己主張は強かったと彼女は語る。父は養子であり、繊細でどちらかというと神経質な人物で、いつも母の陰にかくされてしまうような存在だった。父は三五才の若さで他界してしまったが、彼女のなかでその存在は実にあざやかに息づいていた。ハイカラなところがあって、よく街まで出かけ映画をみてきた。彼女をつれていくこともしばしばあったが、ヘップバーンが好きだった。また、当時のロカビリーのレコードを多く集めて聞くのを非常に楽しんでいた。だが父は、母とは絶対に映画には行かなかった。

「父は、寂しくてかわいそうな人でした。」と彼女はいつも語るのだった。

彼女の上には姉が一人いる。女二人の姉妹である。姉は社交的でしっかり者だとの風評がある。大学卒。

彼女は、母のめんどうは(老後)姉がみるという条件で、自分は遺産の相続権を放棄すると断言して、上京してきた。上京して四年ほとんど故郷に帰らない。

「故郷に帰りたくないのは、家に帰るのが嫌だからです。母の顔をみるのが嫌だから。」


私との治療関係が成立して五〜六週目頃から、彼女の内部世界と彼女の人間そのものとに、はっきりした変化があらわれてきた。

(W私的表現考/表現の現象学 つづく・・・)

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